国頭村の農地では、冬を越したたちが、春の渡りに備えた蓄えの時期を迎えています。北上という過酷な旅を前に、彼らの食欲が一段と旺盛になる季節です。
この日は、耕作地の只中で獲物を押さえ込むメスの個体に遭遇しました。



足元の草に遮られ、獲物の種別までは判別できませんでしたが、その鋭い眼光からは確実な狩りの成果が伺えます。
しかし、平穏な食事の時間は長くは続きませんでした。別の個体が突如として乱入。どうやらここは後から飛来した個体のテリトリーであったようで、先着していたメスは抵抗することなく、あっさりとその場を譲り渡しました。渡り直前の時期、無用な闘争を避けて体力を温存しようとする、彼らなりの生存戦略かもしれません。



その後 農地での観察を続けて1時間ほど経った頃、2羽のサシバが激しく鳴き交わす場面に出合いました。



興味深かったのは、その鳴き声の変化です。サシバ特有の「ピックイー」という力強い声ではなく、甲高い「ピィィー」という叫びが繰り返されていました。
鳴き声を上げていたのは、まだあどけなさが残る幼鳥です。対峙していた成鳥に対し、執拗に声をぶつけ成鳥も似たような鳴き方で返します。


この時期、自立しているはずの幼鳥が成鳥に対してこのような行動を取る背景には、単なる餌のねだり以上の意味があるのかもしれません。成鳥の狩場に依存しようとする未熟さゆえの行動か、あるいは縄張りを巡るコミュニケーションの一端か。
春の渡りを目前に控え、世代間で交錯する緊迫感と生命の逞しさを感じる、貴重な観察機会となりました。